競争力向上に資するための研究・開発の課題(後編) 2020/09/14 コラム Tweet
一般社団法人日本能率協会 KAIKA研究所 近田高志
前回に続いて、日本能率協会が研究・開発部門の責任者を対象に実施した調査結果をもとに、研究・開発を競争力向上に結び付けることにおいて「高成果群」とグルーピングされた企業の特長を探っていきます。
◆「出る杭」「とがった人材」が活躍できる組織風土
調査では、組織風土に関する項目を複数列挙し、それぞれについて「当てはまるか」を尋ねています。
その結果、「『出る杭』や『とがった人材』が尊重され、活躍できている」「お互いに刺激し合っている」の項目についてについて、「高成果群」の方が「低成果群」よりも当てはまるとする比率が高いということが確認できました。また、「会社の理念や価値観が浸透し、社員の日々の行動に現れている」についても、大きいギャップが見られました。
イノベーションを生み出すためには、「出る杭」「とがった人材」が活躍できる組織風土づくりをしていくこと。それと同時に、自社の理念や価値観を共有していくことが重要であるということが、あらためて、明らかとなりました。
◆期待されるCTOの役割
この調査では、CTO(Chief Technology Officer、最高技術責任者)の役割や業務経験についても尋ねています。
その結果、今後、重要性が高まると思われるCTOの業務として、「将来的に成果を生み出す可能性のある基礎的な研究・開発の推進」「既存の事業や商品・サービスに必要な研究・開発の推進」「自社のデジタルトランスフォーメーションへの技術面からの貢献」について、「高成果群」の方が「低成果群」よりも重視度が高くなっているという結果を見ることができました。
競争力を高めていくうえでは、研究・開発の責任者であるCTOが、DXの推進も含めて、現在ならびに将来における事業に必要な研究・開発をリードしていく必要があるということになります。
また、CTOのこれまでの業務経験に関する回答結果の比較が興味深い結果を示しています。これによると、「高成果群」のCTOの70.8%が「商品開発部門」を経験しているのに対して、「低成果群」では43.5%に留まっているのです。
CTOが将来的に意味をもつ基礎研究と、事業に貢献する研究・開発を両立させ、自社の競争力向上に貢献していくうえでは、商品開発の経験を通じた顧客視点が不可欠であるということなのではないでしょうか。
以上、前回に続いて、競争力向上に資するための研究・開発の課題を探りました。コロナ禍も含め、企業をとりまく環境は激変しています。日本企業が生き残っていくためにも、自社の技術力を磨き、顧客起点の発想で新しい価値を生み出していくことが不可欠です。今回のレポートがご参考となれば幸いです。
本調査レポートの詳細については下記をご参照ください。
https://www.jma.or.jp/img/pdf-report/etc_2020-cto.pdf
その他、日本能率協会が発表している各種調査レポートは下記をご参照ください。
https://www.jma.or.jp/activity/report.html