コラム経営の羅針盤

2013 GOOD FACTORY賞5社6工場に決定 2013/09/09 その他

日本能率協会 JMAマネジメント研究所 主管
廣瀬純男

◆ 2013 GOOD FACTORY賞の特徴

今年で3回目となるGOOD FACTORY賞ですが、海外工場のあり方が大きく変化しています。マネジメントの現地化が進んでいるだけでなく、中国の工場では人海戦術から自動化への流れが生まれ、東南アジアでは製品の開発から生産まで行う自立した工場が増えてきました。そして、今回初めてインドの工場が受賞したことも特筆に値します。下記が今回の受賞企業です。

1.「ものづくりプロセス革新賞」 東芝情報機器杭州社(TIH)
2.「ものづくり人材育成貢献賞」トヨタ自動車インド(Toyota Kirloskar Motor Private Limited(TKM))
3.「ものづくりCSR貢献賞」タイ味の素社 カンペンペット事業所
4.「ファクトリーマネジメント賞」小島プレス工業(株)
5.「ファクトリーマネジメント賞」 (株)東芝 セミコンダクター&ストレージ社 四日市工場
6.「ファクトリーマネジメント賞」 三菱電機タイ(Siam Compressor Industry Co., Ltd. (SCI))

 

◆ 受賞社会の特徴と受賞理由

簡単に各社の特徴と受賞理由を見てみましょう。

1.「ものづくりプロセス革新賞」東芝情報機器杭州社(TIH)
TIHは、2002年に中国・浙江省杭州市の加工区に設立された、東芝ノ ートPCのB2B製品のグローバル生産拠点です。同社は設立以来、東芝の経営管理手法であるMI(マネジメント・イノベーション)手法をベースに、スピード感あふれる90日サイクルのPJ(プロジェクト)改善活動を始め、積極的な人材育成(全能工の育成、東芝クラスの設置、社員のケアなど)、非常に質の高いプロセス革新のためのマネジメントが展開されており「ものづくりプロセス革新賞」の受賞にふさわしいと判断しました。

2.「ものづくり人材育成貢献賞」トヨタ自動車インド(Toyota Kirloskar Motor Private Limited(TKM))
TKM社は1997年に設立され、2012年には年間生産台数192,073台、要員9,571名(内;正社員6,187名、製造日本人9名)と大きく成長して来ました。しかし、この間すべてが順調であったわけではありません。2006年のストライキをきっかけに日本人と現地メンバーが一体となって反省点を洗い出し、「人材育成・コミュニケーションを軸にした活動」を展開してきています。
組織・要員面では、「グルクル(社内技能道場)設立」、「TTTI(トヨタ工業技術学園)設立」「日本人のコーディネータ化」といったTKM独自施策や現場管理スパンの見直し、など実践的な工夫もみられます。インドの地でいろいろな危機に直面したとき愚直に問題点を洗い出し、具体的な施策に結び付け、多面的な人材育成と人材登用の実践的な取り組みはGOOD FACTORY賞の人材育成貢献賞に値するものと評価したいと思います。またこの取組の多くは他社の参考になるものと思われます。

3.「ものづくりCSR貢献賞」タイ味の素社 カンペンペット事業所
タイ味の素社 カンペンペット事業所は、首都バンコクから350km離れた農業地で1998年に操業を開始しました。
環境負荷の低減を狙いとする「Green Factory」の構築を目標に掲げ、地域社会、地域環境への貢献を目指し、それを着実に実現してきています。このような「Green Factory」の推進は、「バイオサイクル」というコンセプトをもとに、主原料から製品、さらに副産物を生み出す「製品のバイオサイクル」と、不要になった農産品の副生物(たとえば籾殻)を利用したエネルギー生成を行う「燃料のバイオサイクル」という、2つのバイオサイクルをうまく融合して実現しています。
このように、CSR活動とビジネス活動の結びつき、CSR活動推進の重要な仕組みである「2つのバイオサイクル」、そしてCSR推進の継続的原動力となる好循環のサイクルなどを中心に、今後とも継続してCSR活動を推進できる、大変優れたマネジメントが行われていることが実感され、GOOD FACTORY賞のものづくりCSR貢献賞に十分値する工場であると評価しました。

4.「ファクトリーマネジメント賞」小島プレス工業(株)
小島プレス工業(株)はグローバル化の波の中で次々に消えていく、「日本的経営、人を大切にしたマネジメント」を守り、更なる発展を目指す取り組みが、大変良い活動して展開されていると感じました。
あわせて、従業員の自律的な意識や自由な発想を醸成しながら、これらの活動を意欲ある継続的な活動にするために、マネジメント上の工夫や、それを恒久的な活動にする原動力となる優れた仕組みも見ることができました。(例;提灯プレスの考案、顧客との対話で新しい技術開発を促すテクニカルフロアの設置など)GOOD FACTORY賞のファクトリーマネジメント賞に十分値する工場であると評価します。

5.「ファクトリーマネジメント賞」 (株)東芝 セミコンダクター&ストレージ社 四日市工場
東芝 セミコンダクター&ストレージ社 四日市工場は東芝メモリ事業の開発・量産拠点として、1992年に設立され2002年以降は同社が開発したNAND(ナンド)型フラッシュメモリーの量産と次世代デバイスやプロセスの研究開発を担う拠点として運営されています。
グローバルトップにある企業に追い付き追い越すことを目標に、そのために解決すべき課題を具体的にドリルダウンし、全工場あげて取り組んできました。これは、国内工場ならではの六重苦に正面から取り組み、最新の生産技術と叡智を結集し、一致団結してライバルを凌駕するところまで持ってきた、マネジメントの成果と言えます。

6.「ファクトリーマネジメント賞」 三菱電機タイ(Siam Compressor Industry Co., Ltd. (SCI))
SCI社は、三菱電機(株)静岡製作所をマザー工場とする冷熱・空調用コンプレッサーを生産する工場で、1988年にSiamセメント社との合弁企業として設立され、2015年には400万台の生産をめざす新工場の建設が進められています。
同社のひとつの特徴が、初期からR&Dセンターを設置し、現地人スタッフによる開発がすすめられており、静岡工場とのテレビ会議などの仕組みの活用で、新機種等の開発までをも担当するほどに力をつけています。
以上のことから、この工場は、海外工場の現地化を進めるための総合的なマネジメントシステムを構築し、実践している工場としてGOOD FACTORY 賞のファクトリーマネジメント賞にふさわしい工場と考えられると思います。

 

◆ 所感

今回もGOOD FACTORY賞の審査を通じて多くのことを学ぶことができました。どこの工場も現地従業員の知恵と工夫が溢れています。人を大事にする日本的経営の良さを再認識した次第です。各社がこれからもますます繁栄されることを切に祈ります。

※GOOD FACTORY賞:http://www.jma.or.jp/mono/factory/index.html参照