コラム 経営の羅針盤

新興国での工場立ち上げの苦労話 2014/01/27 コラム

現在、日本の多くの製造業がアジアを中心とする新興国に進出し、現地で生産に励んでいますが、今から25年くらい前は、今では考えられないようないろいろな問題が起きていました。工場立ち上げ当初のエピソードをある企業トップから伺いましたので、ご紹介します。

【トイレにまつわる話を3題】

◆ 1.<トイレットペーパーが無い>

電気部品を製造する大きな工場での操業当初の出来事です。工場の従業員用トイレでいつもトイレットペーパーが無くなってしまうので、大きな問題になっていました。従業員に話を聞くと「いつもトイレにペーパーが無いので、補充があった時に”ひとつ”自分用に確保して、ロッカーに入れておく」とのこと。皆が同じことをするので、いつもトイレにはペーパーが無いわけです。

そこで、社長以下スタッフで知恵を絞りました。日本なら、「トイレットペーパー持ち出し厳禁!」とでも張り紙をするところですが、ここは違いました。あるとき、トイレットペーパーをトイレに一度にたくさん積んでおいたのです。

これを見た従業員は皆驚きました。でも、「これだけあれば、もうトイレのペーパーが無くなることはないわね」と安心して、以後トイレのペーパーの持ち出しはなくなったとのことです。

 

◆ 2.<女子トイレはピカピカ>

トイレットペーパーの問題と同じころの出来事。女子トイレが汚く、食べ物の袋なども散乱していました。さらに、壁には落書きまであったそうです。毎日、清掃の人が片づけるのですが、翌日はまた同じようになってしまいます。

ここで、社長たちはまた知恵を絞りました。
「とにかくきれいにしよう!」ということで、スタッフ全員でトイレを徹底的に掃除して、ピカピカにしたのです。落書きももちろん消しました。

 

◆ 3.<トイレの便座がいつも壊れる>

もうひとつトイレのお話で恐縮です。トイレの便座(樹脂製)が、よく壊れたそうです。その都度、修理・交換するのですが、すぐにまた壊れます。

不思議に思った社長とスタッフは、従業員にどのようにトイレを使っているのか、聞いてみました。すると驚いたことに、従業員の少女たちは田舎から出てきたばかりで、洋式便器の使い方を知らず、なんと便器の上に載って用を足していたのです。靴を履いたまま乗るので、樹脂性の便座はすぐに壊れてしまっていたのです。

それで、すぐに全員に洋式便器の使い方を教えるとともに、トイレに使い方を書いた紙を貼って注意を促しました。それ以降、便座が壊れなくなったのは言うまでもありません。

今から思えばすべて笑い話かも知れません。新興国に進出したばかりの頃は、現地の文化や習慣も良くわからず、手探りのところもあって、駐在の皆さんもさぞたいへんだったことでしょう。決して、「トイレ」のことと笑うことなかれ。トイレを通じて、地道なコミュニケーションを図ってきた日本企業の皆さんの努力の結果が、現地の良好な労使関係を生んでいることは間違いありません。