コラム 経営の羅針盤

行動を問う戦略 2014/02/24 その他

JMAマネジメント研究所 シニアマネジャー
山崎賢司

◆ 思考停止にならないために

ビジネスの世界において「戦略」という言葉は当たり前のようによく耳にするが、これは一種の「思考停止ワード」になっているような気がしている。かつて、Chandler(1962)は、戦略とは「企業の基本的長期目標と目的設定、かつ行動コースの選択、これらの諸目標遂行に必要な諸資源の割当て」であると述べ、Porter(1980)は、競争および競争戦略の基本原理はみな同じで「業界内で防衛可能な地位をつくり、五つの競争要因にうまく対処し、企業の投資収益を大きくするための、攻撃的または防衛的アクションである」と述べた。これらに代表されるように、戦略という概念は多くの学者・研究者によって様々な定義がなされているが、ここでは定義そのものを問うことは避け、ビジネスやマネジメントの世界でどのように使われているかに注目したい。

経営、あるいは事業などを主語にして「経営戦略」「事業戦略」という使われ方をよく目にする。一方、「戦略的に・・・」という接頭語のように使われるシーンにもよく出会う。いずれも、近視眼的に考えるとマネジメントの判断を見誤ることになる、あるいは、よくよく熟考せよ、という意味が含まれているように感じられる。

確かに、長期的な視点や熟考することは大切なことだが、評論家や思想家の立場ではなく、実務家の視点に立つと、最も重要なのは「その戦略は行動を変えるか?」という問いなのではないだろうか。

社内や部内で、戦略会議という名の下に様々なフレームやツールを使いながら喧々諤々と議論される光景をよく見かけるが、議論の結果、「・・・について、このように整理される」「・・・について今こそ考え直す必要がある」「・・・について早急な意見統一が求められる」などという結論になることがある。しかし、これらはビジネスにおいては意見とは言えない。So whatに答えていないからだ。

敢えて第三者的に”野党”の立場で、否定意見や反対意見をぶつけるような検証的な議論は必要なプロセスであろう。しかし、ビジネスにおいては本質的に重要なのは、主体的に”与党”の立場で語り、結果としてステークホルダーをはじめとする社会に向けたソリューション、あるいは価値を提供していくことである。そう考えると、議論は言葉のバトルをするためではなく、知見を披露し合う場でもなく、結果を生むための具体的な「行動」を合意形成するために行うことであろう。

 

◆ 一歩を踏み出す

ビジネスの世界で、愚か者の定義を「同じことを、同じ方法で、毎日毎日繰り返しながら、違う結果を期待する人」とする話を耳にすることがある。確かに、意識や手法、行動を変えなければ結果は変わるはずもない。ビジネスの現場においては、意図のない何気ない言葉、何気ない行動、会議、思考からは、何気ない結果しか出てこない。結局、人間はイメージができないと昨日と同じことを行ってしまう傾向にあるものだ。そこで、ありありとイメージするために必要なのが戦略である。

しかし、戦略そのものは大きくは「計画」に類するものといえる。計画やプラン策定において、将来を描くこと自体に意味はない。将来を描いたことによって、今日の行動の方向性と優先順位が決まり、実際に行動することに意義がある。

逆に、あさっての方へ向けていくら努力をしても成果は生まれない。冷ややかに言えば、結果につながらない行動は努力とは言えないのだ。だからこそ、行動し努力する方向性を指し示すことが必要であり、それが計画であり戦略なのであろう。

誠実とは意志と行動が一致していることである。個人レベルであれ組織レベルであれ、誠実というある種のブランドはビジネスの根幹であり、それは意志と行動が一致し続けることで獲得していく関係性の構築過程でもある。目の前の相手に向けて、組織に向けて、顧客に向けて、社会に向けて誠実でなければ、「次」はない。

今一度、自戒の念も込めて行動レベルで自身や組織の「行動」と問い直したい。そのビジョンは今日の行動を変えるか?その戦略は今日の行動を変えるか?その課題設定は今日の行動を変えるか?社会に向けて誠実だといえるだろうか?