コラム 経営の羅針盤

「提供する価値」から「関わる価値」へ 2014/07/14 調査

JMAマネジメント研究所 主管
山崎賢司

経済産業省が2010年に行った、「消費者購買動向調査~リーマンショック以降の日本の消費者の実像~」の調査がある。全国の20代から60代を対象に、インターネットでの定量調査、またグループインタビューによる定性調査を行うと同時に、企業250社への電話アンケートを行っているものだ。この中で「消費者のプロシューマー化」、ついての項目がある。プロシューマーとはプロデューサー(生産者)とコンシューマー(消費者)を組み合わせた造語で、消費するだけではなく、メーカーなどの、つくる・提供する側にも関わりを持つ消費者のことを指す。

「企業がインターネットなどで一般消費者の意見や要望を募り、そのアイデアをもとにして新商品を開発する」ことについての経験や質問をした結果、「知っているし、投稿したことがある」と答えた人はまだ少数派であったものの、「知っている」が約3割、「意見を投稿してみたい」も約3割、合計で過半数の人が認知をしている。さらにこの調査によると、プロシューマーの意見を企業が採用することについては好意的な評価が多く、「そのような企業がもっと増えるとよい」(42.7%)、「そのような企業の商品はこだわりの心を満たしてくれる」(31.4%)という回答であった。

事例としては、サッポロビールが「百人のキセキビール」プロジェクトにおいて、SNSを通じて日本中のビール愛好家をつなげ、ビールの商品開発を、コンセプトの設定から一緒に行って商品化した例がある。このように、顧客を巻き込み、提供する物やサービスを一緒に考え、つくる取り組みが生まれつつあるる。顧客と企業とのワークショップ型の共同作業によって考案された物が商品化するといった例もある。

◆ 価値はどこで生まれるのか

このようにして生まれた商品は、顧客のニーズを満たしているという点で顧客満足度が高い商品だが、アイデアを出す場面において、参加している購入者は単なる消費者の枠を超えてプロシューマー化し、企業側は一方的な提供ではなく「創発する過程」をつくりだすという役割を担うことになる。

企業側がニーズを拾うためにSNSやワークショップという手段をとり、結果としてそこで開発された物を参加メンバーが買うというサイクルができれば、それはニーズを生むための活動だと見ることもできる。しかし、真の満足理由は物そのものではなく、一緒に商品化プロセスに「関わった」こと、つまり経験や体験そのものである。言い換えれば、価値は商品が提供される価値ではなく、関わる価値にある。この「関わる価値」はそれ自体が市場になりつつある。

◆ 関わる価値へのシフト

ある意味で「欲しいモノがない」時代は終わり、「プロセスに関わる楽しみ」「一緒に創る喜び」「社会のためになることをしたい」などという欲求と、それに呼応した動きが増えてきている。

金銭のやり取りが生じる部分を「経済活動」とすれば、この「関わる」部分は結果としてニーズが生まれ、「経済活動」が行われていくための「前提」部分とも捉えられる。ただ、「ニーズ」によって売上が左右された従来に比べて、この「前提」重要度が増している。時には「前提」の方が主体となって「経済活動」が動く場合もある。

企業側が財・サービスを市場に提案する形を通して価値を供給し、それに対して市場が動く(購入する)という構造は、変わりつつあるのではないだろうか。「関わる」ことを重視する考え方は、企業側から見て、「市場」や「価値」という概念そのものを捉えなおさなければならないほどの影響があるのかもしれない。