コラム 経営の羅針盤

シリーズ 北海道「食・農・観光」徒然記〔3〕 2019/02/01 コラム

一般社団法人日本能率協会 KAIKA研究所
田中達郎

◆“資源”を有効活用する

国や地域が持続的に自立し、発展していくためには、そのエリアにある貴重な資源を有効活用する必要があります。“資源”と言ってもそのワードから想起されるイメージは人それぞれでしょう。国家レベルのマクロな視点では例えば石油や鉱物といった天然資源や海洋資源、私たちの身近な生活レベルでは水や食べ物を、ビジネス上でのそれはお金や人材など、定義も幅広いものです。

このコラムの1回目の中で、日本能率協会(以下、JMA)が、2017年度より北海道の地域活性化支援事業を展開していることに触れました。JMAでは北海道の3大資源である「農業」「食」「観光」に着目したいくつかのプロジェクトに関わっています。その内の一つ、2018年からは観光産業の振興を目的とした「観光・ホテル・外食産業展」を開催しています。

皆さんもよくご存じの「さっぽろ雪まつり」をはじめ、元来、北海道では産官学民のあらゆる主体事業で観光を軸にしたイベントや取り組みが多数実施されています。そこで、これまで北海道内でありそうでなかった、観光産業の主にホテル・外食産業の事業者マッチングをお手伝いする商談の場(展示会)をご用意しました。これはJMAが過去約50年にわたり東京で開催してきた同分野の展示会「HCJ(国際ホテル・レストラン・ショーほか2展)」のノウハウを活用し、北海道版として再構成する初の試みとなりました。まさに、JMAも保有する“資源”を有効活用したわけです。

 

◆インバウンド観光のポテンシャル

2018年通年の訪日外国人旅行者数が3,119万人となりました(日本政府観光局発表)。2012年より以前は1,000万人にも満たない数で推移していたことを考えると、ここ数年の飛躍的な伸びには目を見張るものがあります。私たち自身、街を歩けばキャリーバッグを転がして颯爽と歩く外国人を見かけない日はないと言えるほど、本当に旅行者が増えたことを実感します。この勢いは留まらず、政府も2020年の同目標を4,000万人に、そして30年には6,000万人を目指し観光立国となる未来を描いています。

また、人数に比例して増えるのが旅行による消費額です。2017年の訪日外国人旅行消費額は4兆円を越えました。これは国内の製品別輸出額の比較において、自動車(11兆円)、化学製品(8兆円)に次ぐ上位3番目の規模となります。これについても政府は、32年に現在の化学製品を越える8兆円を目指すと発表しています。どうりでテレビでも日本に来た外国人を追いかける番組が流行っているのも頷けます。

さて、こういった数値や報道に接する私たちはとりあえず、外国人観光客が増えれば日本の魅力が高まるし、国内景気にも良い影響がありそうだ、という前向きな感想を抱きます。ところが、観光業界は実は必ずしも前向きな反応ばかりではありません。なぜなら、これまでの観光業界を支えてきたシステムが国内向けの仕様であり、外国人の受け入れのために直ちに準備しなければならないことが山積しているからです。

 

◆衣食住。真っ先に課題になるのは…

生活を支える基礎として私たちは「衣食住」という言葉を使います。いずれもなくてはならないものです。これを日本に来る外国人旅行者に当てはめて考えてみましょう。「衣」は問題ありませんね。さすがに素っ裸で入国する旅行者はいないでしょうし、幸いどこでも手軽に、豊富にそろったデザインの中から好きな衣類を買うことができます。「食」はどうか。これも日本は各国と比較して非常に選択肢が多く、安価でサービスも良く、しかも24時間オープンしているお店がいくらでもあるので、特段支障はありません。余談ですが、お店に入ってまず無料でお水が提供されるような親切な国は日本以外にありません。これも“おもてなし”ですね。

残るは「住」。問題はここです。急増する旅行者を受け入れる宿泊機能が圧倒的に足りないのです。衣や食に比べ、確かに住は準備するための時間も資金も格段に大きな負担を要します。大型の施設となると都市計画なども関係してくるため一筋縄にはいきません。ピンチはチャンスでもありますので、民泊や有休施設の活用といった新たなビジネスチャンスの到来と捉える向きもありますが、ハード面だけではなく、言語や決済、接客スタッフの不足などの課題も出てきます。急激な観光客数の増加に対応し、観光立国を標榜するためにはまず、この「住」に関する課題を解決しなければなりません。(4につづく)