コラム 経営の羅針盤

シリーズ 北海道「食・農・観光」徒然記〔4〕 2019/02/01 コラム

一般社団法人日本能率協会 KAIKA研究所
田中達郎

北海道の宿泊施設事情

都道府県の魅力度ランキングで10年連続1位の座を射止めている「北海道ブランド」(ブランド総合研究所発表)。人口減少や高齢化といった深刻な悩みを抱える北海道にとって、この価値を効果的に発信することでアジアをはじめとした海外へ浸透させ、成長力を取り込むことが求められています。そのための有効な策の一つとして「観光」の取組みに注目が集まっています。

先に挙げた訪日外国人旅行者数に関しては、北海道では2020年に500万人を目指すという高い目標を掲げています(2017年通年実績は279万人)。ちなみに北海道は都道府県別の延べ宿泊者数が大阪府(3,321万人泊)を抑え、東京都(5,995万人泊)に次ぐ2位(3,556万人泊)となっています(観光庁発表:いずれも2017年度実績)。各県の人口構成や周辺の商圏で比較するとこれはかなりインパクトのある事実です。ここまでの文脈から捉えると、今後ますます旅行者が増えることで早晩、宿泊施設が枯渇すると想定されます。

そのため、札幌を中心に北海道内では現在、ホテル再開発ラッシュを迎えています。観光に加えてビジネス需要も見込まれるエリアでは特に宿泊特化型のホテルが急ピッチで建設されています。実はこの「宿泊特化型」は優れた特徴を有しています。ローコスト建設によるハード面の初期投資を抑える一方で、徹底した省人化や標準化、外注化をはかることでオペレーションもローコスト化させ、顧客には低価格でサービスを提供することが可能となるモデルです。ホテルオーナーはこのモデルを支えるための省力化や効率化の製品、システムに大きな期待を寄せています。

 

◆差別化のカギは「食」

観光客の増加に伴う宿泊施設の増加もある局面を迎えると供給過剰に陥りかねません。特に北海道のような、季節による繁閑が激しい地域は年間を通して安定した宿泊利用者数を実現させることは非常に困難です。実際に同地の観光トップシーズンの8月と、オフシーズンとなる11月を比較すると観光客入込み数は半分以下に激減する状況です(札幌市経済観光局発表)。そこで各宿泊施設は経営の安定化とあわせて、閑散期でも顧客に利用してもらえる施設となるべく差別化をはかる必要に迫られます。ここでカギとなるのが「食」です。

もともと全国的にも有数の歓楽街の一つ「すすきの」を有する札幌には、北海道の美味しい食材を使った飲食店が多数出店しています。札幌に限らず、北海道内各所でご当地ならではのメニューをそろえて誘客をはかっています。誰しも北海道旅行や出張の楽しみの一つに「食」を挙げることでしょう。そのため、宿泊施設でも朝夕の食の提供に工夫を凝らし、他の施設や飲食店にも勝る特徴的な企画やプロモーション活動を積極的に展開しています。「食」を巡った業界の垣根を越えたアイデア合戦が一段と激しさを増しているのです。

競争に勝つためにはアイデアを集め、設備を充実させ、質の高いサービスを提供するスタッフという“資源”を保有しなければなりません。今北海道ではインバウンド需要という空前のビジネスチャンスを前に「観光」や「食」を舞台にした熾烈な資源争奪戦が起きています。繰り返しになりますが、現在3,000万人の外国人旅行者数は、10年後には倍になると予測されています。拡大するマーケットがそこにあるなら、あなたは今何をすべきでしょうか。