コラム 経営の羅針盤

あらためて、『目的』が問われる時代 2019/02/14 KAIKA

一般社団法人日本能率協会 KAIKA研究所 所長
近田高志

ご覧になられた方も多いと思うが、2019年3月号のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー誌の特集テーマとして、『Purpose(目的)』が取りあげられていた。
デジタルエコノミーの時代にあって、価値創造をしていくためには、外部と意義ある協働をするとともに、優れた才能を惹きつけることが必要であり、そのためにも、組織の存在意義、パーパスを外部に積極的に発信すべきであるという企画意図であった。

誌面では、ハーバード・ビジネス・スクールのセラフィム教授らによる、『パーパスは収益を左右するのか』という小論が紹介されており、非常に興味深い内容であった。
彼らの分析によると、パーパスを掲げていること自体には財務業績との間に相関がなかったが、パーパスがあり、かつ、マネジメントの期待や展望が明瞭・明快である組織について見ると、財務面でも優れた実績をあげているという結果であったそうだ。

 

◆働くことが喜びに

日本能率協会では、2009年度に発表した提言「潜在能力の組織的発揮 ~『働く人の喜び』を生み出す経営~」において、「目的」を軸とした経営の重要性を主張していた。
提言レポートはこちら→ https://www.jma.or.jp/img/pdf-teigen/teigen_2009.pdf

この提言は、人類学や脳科学、心理学の専門家の方々に研究メンバーに加わっていただき、人はなぜ働きたいのかについて「人の本性」の観点から考察するとともに、全国各地の元気な企業の経営者や社員の方々へのインタビューを重ねた成果をとりまとめたものである。

わが国経済が成熟化するなかで、企業が活力を取り戻し、持続的に成長するためには、「わが社は何のために存在するのか」という目的を共有することが重要である。共通の目的軸のもとで、企業が人を大切にし、働く一人ひとりが「働くことの喜び」を実感することによって創意工夫がなされ、社会にとって意義のある商品やサービスが提供され、「社会の喜び」が実現する。そして、その対価として、企業は次の成長の糧となる利益を受け取ることができる(=「企業の喜び」)、という内容であった。

この提言を発表してから10年が経過しようとしているわけだが、企業には、より社会課題を意識するとともに、社員の意欲を高め、イノベーションを実現していくことが求められている。あらためて、「目的」を問い直すことが重要となっているということであろう。

 

◆「何のために」を考えつづける

日本能率協会では、先述の提言を土台としながら、これからの時代における組織のあり方として、「KAIKA(開花・開化)」を提唱している。
組織や個人が社会への感度を高め、社会との関わりを深めることによって、社員は主体的・自律的に行動し、成長実感をすることができるようになり、組織は社内外の連携が活発化し、新たな挑戦が生まれるようになる。そして、これらが同時実現した結果として、新たな社会価値が創出されるという考え方だ。
詳細はこちら→ https://kaikaproject.net/

この考えにおいても、やはり、「目的」が基軸となるということは、言うまでもない。
「KAIKA」の普及に向け、小会としても、いかにして、自社の「目的」を再確認し、共有していくかの方策を具現化していきたい。

 

執筆者プロフィール

1995年一橋大学商学部卒業。北海道拓殖銀行を経て、1999年に日本能率協会(JMA)入職。次世代経営者やリーダー育成プログラムの企画・開発を担当したほか、企業経営や人材育成、組織開発に関する調査・研究プロジェクト従事。2014年7月から2年間、経済産業省産業人材政策室に出向。2018年4月から現職。