コラム経営の羅針盤

シリーズ SDGsを再考する(1) 2019/03/01 コラム

一般社団法人日本能率協会 KAIKA研究所
田中達郎

 

◆地方創生とSDGs


最近は民間企業の事業方針や学校教育、投資活動など国内のあらゆるシーンでSDGsがキーワードとして登場する機会が増えています。特に国が主導する活動や運動において、その動きは顕著です。たとえば、内閣府 地方創生推進事務局は「自治体SDGs」の取組みを支援するプラットフォームの構築やモデル事業の選定などを実施しています。行政、自治体が取組む“地方創生”では、地域の抱える課題を解決し持続可能なまちづくりと地域活性化をはかる目的でSDGsを共通言語に利用し、産官学民の連携を促進しています。

2017 年の第1回ジャパン SDGsアワード総理大臣賞を受賞した北海道下川町は森林未来都市モデルを掲げ、エネルギー自給と自立型の地域創造を実現し、自然と住民が共に栄える取組みを行っています。また、自治体の先進的な取組みモデルとして北海道と札幌市、下川町、ニセコ町が「SDGs未来都市(全国29都市)に選ばれ、その内特に先導的な取組である「自治体SDGsモデル事業(全10事業)」に下川町とニセコ町が選出されています。地域特性から過疎化や人口減少が深刻な北海道は、他府県に比べいち早く地域課題解決と自立的好循環のためのSDGsの活用を実践していることがわかります。

 

◆SDGsとは何か

さて、ここで “SDGs”について簡単に触れておきたいと思います。SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2016年から2030年までの国際目標です。17のゴールと169のターゲット、この目標達成のためのインディケーターで構成されています。先進国や発展途上国などの違いを問わず、全世界共通の目標として、経済・社会・環境の諸問題を統合的に解決することの重要性が示されています。

いつの時代にも紛争や自然災害、環境破壊による貧困や飢餓など、多くの課題を抱えている国や地域は存在し、そのための支援を政策的に実施する動きも古くからあります。開発援助戦略の系譜としては、1947年の戦後マーシャルプラン以降、おおむね10年周期のマクロ経済とミクロ社会のダイナミズムの内側で状況は変化してきています。SDGsの前身のMDGs(2001年-2015年)では、“2015年までに貧困人口を半減する”目標を掲げていました。そしてSDGsでは“Leave no one behind(地球上の誰一人として取り残さない)”のメッセージのもと、極度の貧困を撲滅する目標に向けた誓いとその実現のための17の目標となっているのです。従来の国際開発の文脈では主に国やNGO、NPOやボランティアといった側面でのみ語られていましたが、SDGsでは「開発にビジネスの視点を」「ビジネスに社会的責任を」という両面からのアプローチが求められており、従来相反するものであった開発とビジネスが相互接近した点において、全地球人が真剣に語り合うべき非常に実質的な目標となっています。

 

◆SDGsと日本企業

開発とビジネスの両面で語られるべきSDGsではありますが、では、企業としては何をもって事業とSDGsを結び付ければよいのでしょうか。すでに企業の社会貢献活動としてCSRというキーワードが存在します。また金融の世界ではESG投資と呼ばれるものもあります。更に最近ではCSVという言葉もあります。いずれも社会や環境のために企業がよいことをする、よいことをする企業を評価するという意味で社会貢献活動のひとつと言えるでしょう。これらの間に明確な線引きの必要はありません。ただし、ビジネスである以上、“自発的で”“持続性があり”“相互利益を実現できる”ものでなければ成り立ちません。

また、2018年に経団連が実施した「企業行動憲章に関するアンケート」の結果から、日本企業の特徴として、国連が最も重視している貧困や飢餓を無くすための取り組みに対しては消極的な姿勢が見て取れます。
SDGsには17のゴールがあります。その解釈や理解についても多様でよいのです。まずは企業として、ビジネスとしてのSDGsの達成に向けた取組みにエントリーすることが重要です。一人ひとりがまず自分事としてもっと深く熟考し、議論する機会を持つことです。そのうえで、限られた時間と資源をもって解決すべき課題の優先順位を明確にし、本当に意味のある活動としなければなりません。(2)へ続く

 

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