コラム 経営の羅針盤

人材不足感が続く日本企業 人材投資の実際(上) 2019/08/15 コラム

一般社団法人日本能率協会 KAIKA研究所

◆人材採用難にあえぐ日本企業

日本能率協会(JMA)が毎年行っている「経営課題調査」において、2018年度における「現在の経営課題」は、第1位「収益性向上」(43.2%)に続き、第2位「人材の強化」(39.5%)、第3位「売り上げ・シェア拡大」(36.2%)の順となりました。2017年度と比較すると、「人材の強化」の比率が3.6ポイント増加し順位を上げています。

また、今後の経営に影響を及ぼすと思われる要因について、どの程度の影響があるかを尋ねたところ、「非常に影響がある」と答えた比率が高い項目は、「人材採用難」(31.2%)と「人件費高騰」(21.8%)でした。いずれも、「やや影響がある」までを含めると、9割を超える企業が「影響がある」と回答しました。

「人材不足」や「人材流動化」は昨今よく取り上げらるテーマのため実感はされているでしょうが、「今後の経営課題」としても、経営者が強く認識しているということがあらためて読み取れると思います。

日本企業の「人材投資」は国際的にも低いといわれてきました。「人材育成投資(OJT 以外)/GDP 比率の国際比較」における海外との比較からみても、日本は低い水準に位置していることがわかります(参考:経済産業省・平成29年「雇用関係によらない働き方」に関する研究会 報告書)。

「人材不足」が経営課題として大きく捉えられている近年、ここであらためて日本企業の「人材教育」「人材投資」の状況を確認してみたいと思います。
上記小会の結果を踏まえたうえで、厚生労働省が毎年発表している「能力開発基本調査」から、今回は「正社員」の現状をみてみます。

 

◆正社員の能力開発、77.4%は企業主体で決定。半数以上はOJT重視

(以下、“ ”内は引用部分)

“平成30年(2018年)度の「能力開発基本調査」からみると、正社員に対する能力開発の責任主体については、「企業主体で決定」(25.1%)又はそれに近い(52.3%)とする企業は77.4%と多くを占めており、一方「労働者個人主体で決定」(4.2%)又はそれに近い(17.1%)とする企業は21.3%となっている。”

正社員においては「企業主体」での能力開発が主となっています。企業から見た能力開発への認識はあるものの、個人が自ら選択して広く能力開発をしたり、個人が選択する研修への参加費補助をする、という意識は少ないようです。

“正社員に対して重視する教育訓練については、「OJTを重視する」(20.5%)又はそれに近い(53.1%)とする企業は73.6%と多くを占め、一方、「OFF-JTを重視する」(4.2%)又はそれに近い(20.3%)とする企業は24.5%となっている。”
“正社員に対する教育訓練の実施方法の方針については、「外部委託・アウトソーシングを重視する」(11.0%)又は「それに近い」(30.9%)とする企業が41.9%であるのに対して、「社内を重視する」(18.5%)又は「それに近い」(37.9%)とする企業が56.4%と上回っている。”

企業内研修(インハウス)重視の研修が半数以上を占める背景には、OJTを重視する日本企業が多いところからも読み取れる傾向かと思いますし、社内に通用する技術・知識の継承や文化・風土の継承なども含まれる結果なのかもしれません。最近は、one-on-oneやフィードバック・カルチャーへの関心が高まっていることもあり、それをOJTに含めれば今後さらに増えることも考えられます。
(下につづく)

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日本企業の経営課題調査