コラム 経営の羅針盤

米国の経営者団体Business Roundtableからの問題提起 2019/10/07 コラム

一般社団法人日本能率協会 KAIKA研究所 所長 近田高志

 

2019年8月に、米国における経団連にあたるBusiness Roundtable(BRT)が“Statement on the Purpose of a Corporation(企業の目的に関する声明)”の改訂を発表し、大きな話題を呼んでいる。それまで、「企業の第一の目的は、株主価値を生み出すことである」としていたものから、顧客、従業員、サプライヤー、コミュニティ、株主のいずれのステークホルダーも重要であり、全てに対して価値を生み出すことにコミットすると見直した。

これに対して、「当然のことを今さら何を」とか、「見せかけのポーズではないか」といった批判も見受けられる。
たしかに、日本では、近江商人の「三方良し」の考え方があり、多くの企業が様々なステークホルダーに価値を生み出すことを当然のことと考えている。アメリカにおいても、有名なジョンソン&ジョンソン社の「Our Credo(我が信条)」において、同様の考えが示されている。
また、この声明に署名した経営者には、投資ファンドや銀行・証券会社も含まれており、疑いたくなるのももっともなことだろう。

これについては、これからの推移を見守るしかないかもしれないが、筆者が関心をもったのは、こういった批判に対して、BRTが議論を歓迎するという追加の声明を発信していることだ。
最初の声明が8月19日付で発表されたのち、8月25日付で“Redefined Purpose of a Corporation: Welcoming the Debate(議論を歓迎する)”と発信し、こういった疑問や批判に対して、コメントをしている。

この中では、80年代には様々なステークホルダーを重視するとしていたものを、「会社の乗っ取り屋(corporate raiders)」からのプレッシャーもあり、1997年の改訂で株主重視の姿勢を打ち出したとの反省が書かれている。
また、けっして株主軽視ということではなく、新たな声明において「長期的な価値を生み出すこと」としていることが再確認されている。
さらに、具体的な次の行動として、例えば、賃上げや、教育・トレーニングの拡大、長期志向の経営を行えるように投資家グループの理解を得るといったことも触れられている。

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批判はともあれ、この新たな声明を打ち出すにあたって、多くの専門家も交えながら、経営者たちが議論が行い、発表時点で181名が声明に署名していることは、注目すべきことだろう。
我が国においても、会社の目的とは何かについて、当たり前のことと片付けるのではなく、社会からの企業への期待の変化も踏まえながら、不断に議論を重ねることが重要ではないだろうか。