コラム経営の羅針盤

いまこそ一人ひとりがリーダーシップの発揮を(2) 2019/12/26 コラム

一般社団法人日本能率協会 KAIKA研究所 所長 近田高志

◆リーダーシップとは、誰にでもできるもの

『リーダーシップ・チャレンジ』が前提としている基本的な考え方は7つある。

①リーダーシップとは、誰にでもできるもの
リーダーシップの実践は、さまざまな組織におけるあらゆる職種のごく普通の人びとを、男女、年齢、国籍にかかわらず調査することから抽出されたものである。私たちのすぐ隣にいるような人が、メンバーを束ねて何かを成し遂げたときの共通のパターンともいえる。
それは、生まれついての先天的なものではなく、学ぶことができるものである。
また、性格によるものではなく、何をするかという態度によるものである。より良いリーダーシップを発揮したいという決意さえあれば、誰しもが発揮できるものなのである。

②リーダーシップとは、関係性である
リーダーシップとは、人びとを導こうとする人と、それに従うことを選択した人の関係性にある。この「従うことを選択する」ということが重要で、『リーダーシップ・チャレンジ』では、リーダーに従う人を、“Follower(フォロワー、従う者)” ではなく、“Constituent(選挙区民)” という言葉で表現している。
つまり、リーダーシップとは職位や権力によるものではなく、メンバーが自ら進んでついてきてくれるかが問われるのである。

③リーダーシップとは、自分自身で開発するもの
④最良のリーダーとは、最良の学習者
⑤リーダーシップ開発とは1回の出来事ではなく、継続するプロセスである
⑥優れたリーダーになるためには実践—それも考えながらの実践を要する

③から⑥はリーダーシップ開発に関するものである。
リーダーシップとは、外からるのではなく、自身の内面から湧き上がるものである。より良いリーダーになるためには、自分自身を見つめ、自己の価値を探索することからはじまる。
そのためにも、リーダーは学習者であらねばならない。多くのごく普通の人びとがリーダーシップを発揮し、より良いリーダーとなれたのは、生まれながらの資質があるからではなく、さまざまな経験のなかから、時には失敗をしながら学習したからである。
自身がより良いリーダーとなるためにも、また組織を成長に導くためにも、リーダーは自らが最良の学習者であることが求められるのである。そして、そのリーダーシップの開発とは、1回の出来事でできるものではないということだ。日常のなかで実践を繰り返すことによって、磨かれるものである。それも考えながら実践することが重要だ。
リーダーシップを磨く機会は、日々の活動のあらゆる場面に存在しており、それらの機
会を一つひとつ意識して、実践する必要がある。

⑦リーダーシップとは、願望と選択である
優れたリーダーとなるためには、まず自分自身がより良いリーダーになりたいという願望をもたなければならない。そのうえで、日々のなかでリーダーとして望ましい行動を自ら選択して行うことが、リーダーシップにつながるのである。
ところで、リーダーシップを願望するということに、躊躇する人もいるかもしれない。リーダーシップを発揮するということは、責任とリスクを伴うからである。リーダーシップを発揮するよりも、誰かの指示に従っているほうが、居心地が良いかもしれない。しかし、この『リーダーシップ・チャレンジ』は、ごく普通の人びとのリーダーシップ行動から導かれたものだということを、あらためて思い出していただきたい。むやみに自分を英雄的なリーダーと比較するのではなく、まず何ができるか、その一歩から始めることが大切ではないだろうか。そうすることが、これまでどおりではない「違いを生み出す」リーダーシップの旅の第一歩となるのである。<(3)に続く>

※本コラムは、『JMA Management Review』2011年5月号をもとに筆者が加筆・修正を加えたものです。