コラム経営の羅針盤

センス・オブ・ワンダー 2020/06/19 コラム

一般社団法人日本能率協会 KAIKA研究所 近田高志

『センス・オブ・ワンダー』は、環境汚染への警鐘を鳴らした『沈黙の春』の著者であるレイチェル・カーソンによる書。甥のロジャーと海辺や森を散歩しながら、自然と触れ合い、感性を育むという内容です。
15年ほど前に私が担当した研修に参加いただいた方からご紹介いただき、それ以来、折を見て読み返しています。

『センス・オブ・ワンダー』(新潮社・1996年)

◆自然への感性を大切に

この本は、心の中に様々なメッセージを投げかけてくれます。
素朴に自然の美しさを感じて心を動かされること。生物多様性や循環する環境を維持することの大切さ。あるいは、そうしたものへの感性をもち、純粋な目で受け入れることの重要さ。さらには、自分自身も多様性のなかの一つの存在であること、相互につながりあった存在であることを認識すること。

こうした『センス・オブ・ワンダー』の読後感を持ちながら自然のなかに身をおいて、辺りに目をやり、耳を澄まし、風を肌で感じると、ある種の「マインドフルネス」の状態になることができます。

◆組織としての「センス・オブ・ワンダー」を

個人にとっては、こうした心の平安がもたらされるという効能がありますが、組織にとっての「センス・オブ・ワンダー」も重要な意味があるのではないかと考えられます。
SDGsへの関心が高まり、投資家もESG投資を拡大している昨今、企業にはこれまで以上に「社会性」が期待されています。経営者も、社会課題を捉え、そこに新しい事業の機会を見出していこうと考えています。さらに、働く人びと、とりわけ若い世代においては、大半の方が、所属している組織が社会の役に立つことができているかを重視しているという調査結果も出ています。

日本能率協会が提唱しているKAIKAの考え方において、「個人の成長」「組織の活性化」とともに、「組織の社会性」を重視しているのは、こうした背景があるからです。こうした「組織の社会性」を高めていくためにも、組織としての「センス・オブ・ワンダー」が意味をもってきます。

ややもすると、組織は同質化し、組織の論理に染まった考え方に囚われがちです。自社を取り巻く環境を素直に見つめ、社会の声に耳を傾け、変化のトレンドを感じる。組織としての「センス・オブ・ワンダー」を保持すること、マネジメントの観点では、社員一人ひとりがそうしたマインド、行動ができるようにしていくことが、これまで以上に重要になっていると思うのです。