コラム経営の羅針盤

映画の名言に学ぶ、こころの指針 2020/11/04 コラム

一般社団法人日本能率協会 KAIKA研究所 近田高志

ウィズ・コロナの新しい生活様式が広がるなか、映画館においても、万全の対策を行いながら、観客受入れが広がっています。先日、公開が始まった『鬼滅の刃』は、公開10日間で興行収入が100億円を突破。これは、これまでの最速記録というだけでなく、同時期における日本以外の各国での興行収入総額を上回る金額というから驚きです。
映画には、人々を勇気づけ、元気にする力があることを再認識させられました。今回は、映画のなかの名言を取りあげ、これからの生き方の指針を探りたいと思います。

■I decide who I am.

一つ目は、イギリスのロックバンド、クイーンを扱った映画『ボヘミアン・ラプソティ』から。ボーカルのフレディ・マーキュリーが、自分がエイズウイルスに感染したことをメンバーに伝えながら、発した言葉が、“I decide who I am(自分が何者かは自分で決める)”。
病気のことだけではなく、性的指向や出自などに対する社会からの偏見。家族や恋人、仲間からどう見られるか、他者の目にどう映るか。そうした囚われから自らを解放し、自分らしい生き方を選ぶことを心に決めた強い意志が表れています。
キャリア研修などで、よく、「Will」「Can」「Must」という枠組みを用います。Must(やらなければならないこと)に応えること、Can(できること)を広げることも重要ですが、Will(自分がしたいこと)を持つことが何よりも大切なことではないでしょうか。また、最近、会社としての「Purpose(目的)」を問い直す動きが広がっています。価値観が多様化し、変化が激しくなっている時代にあっては、自分たちが何者かを自分たちで決めること。自らのアイデンティティを明らかにすることが、より重要になっています。

■No, not try. Do, or no do. There is no try.

二つ目にご紹介するのは、『スターウォーズ エピソードV 帝国の逆襲』から。ジェダイ・マスターであるヨーダが、主人公のルーク・スカイウォーカーに、沼に沈んだ戦闘機を、フォースを使って持ち上げるよう指示したところ、ルークが「わかった、やってみるよ」と答えたことに対する言葉。「やってみる」のではなく、「やるか、やらないか」であると、強い決意を求めています。
何かを成し遂げるためには、中途半端な意志ではなく、時に、これくらいに強い心が必要となるということを示唆しています。

■そのうち、お前にもそう言う時が来るよ

最後は、邦画『男はつらいよ 第39作 寅次郎物語』から、寅さんの言葉。満男からの「人間は何のために生きてんのかな?」という問いかけへの返事。「何というかな。あぁ、生まれて来てよかったな、って思う事が何べんかあるんじゃない。そのために生きてんじゃねぇか」「そのうち、お前にもそう言う時が来るよ。な、まあ、がんばれ」
「希望学」を提唱した東京大学の玄田有史教授は、人生を振り返った時に「まんざらでもない」と感じられることの大切さを述べています。強い意志を持って生きることも大切ですが、そうは言っても、思い通りには行かない人生。いつの日か、生まれて来てよかった、まんざらでもないと思える生き方があってもよいのかもしれません。
寅さんの名言は、松竹のオフィシャルHPで紹介されているほか、書籍も出ています。難しい時代だからこそ、ほっとさせられる言葉がたくさんあります。

以上、今回は、映画の名言のなかから、こころの指針となるものを3つご紹介しました。もちろん、ほかにも、たくさん名言はあるかと思います。秋が深まるこの季節に、映画を見て、心の糧を得てみてはいかがでしょうか。