コラム 経営の羅針盤

四方よし 2021/01/13 コラム

一般社団法人日本能率協会 KAIKA研究所 近田高志

◆企業の社会的責任と「三方よし」

2015年に国連が提唱したSDGsへの関心が一層高まるなど、企業の社会的責任や存在意義をあらためて問い直す動きが広がっています。また、ESG投資が拡大し、投資家や株主からも、社会課題の解決に向けた対応が求められるようになってきています。
企業の社会的責任に関して、日本には古くから「三方よし」の考え方があります。これは、近江商人の経営哲学を表している言葉で、「売り手よし、買い手よし、世間よし」を示しているものです。
売り手だけが利益を得ればよいということではなく、買い手側にとっても、さらには、世間にとっても望ましい状態を追求する考え方であり、今日のCSRに通じています。事業活動を通じて社会に貢献し、社会と共存・共栄していくという、商人の叡智の結晶であると言えるでしょう。

◆「未来よし」を加えた「四方よし」

この「三方よし」に関して、先日、京都を拠点に活躍されている中小企業診断士の方から、その発展形として、「四方よし」という考え方をお聞きしました。「売り手よし、買い手よし、世間よし」に、「未来よし」が加えられたものということです。
もともと「三方よし」の考えにも、未来に向けた時間軸が含められていたものと思いますが、「未来よし」を加えることにより、現在の「買い手」や「世間」との関わりだけではなく、未来のステークホルダーにとっても望ましい状態を目指すということが、より明確になります。企業活動が未来の社会や環境などに対して、どのようなインパクトをもたらすか。社会の持続性が問われる今日だからこそ、「未来よし」の視点がより重要になると言えるでしょう。
ところで、ネットを見ると、この「四方よし」は既に様々なところで触れられています。なかには、「働き手よし」を加えている企業も見受けられます。多様な働き方や、社員のエンゲージメントへの関心が高まっている昨今ですので、「売り手よし、買い手よし、世間よし、働き手よし、未来よし」の「五方よし」としても良いかもしれません。

◆「四方よし」とKAIKA

「三方よし」に「未来よし」を加えた「四方よし」の考え方は、日本能率協会が提唱しているKAIKAの考えにも通じるものです。KAIKAは、「個人の成長・組織の活性化・組織の社会性」を同時に実現することによって、持続的に価値を生み出すことができるという経営・組織づくりの考え方ですが、未来に向けた組織の目的(パーパス)やミッション、社会的使命がその中核となります。
企業の社会的責任だけではなく、イノベーションやDX(デジタルトランスフォーメーション)による新たな価値創出に向けて、「未来よし」の視点から、これからの経営を考える必要があるのではないでしょうか。