コラム経営の羅針盤

セカンド・ペンギン 2021/07/20 KAIKA

一般社団法人日本能率協会 KAIKA研究所
近田高志

◆ファースト・ペンギン:海に飛び込む1羽目のペンギン

DX(デジタル・トランスフォーメーション)への取り組みなど、企業経営において、イノベーションの実現が重要な課題となっています。既存の事業が成熟化していくなかで、いかにして、新しい商品やサービス、事業、あるいはマーケットを創り出していくか。これまで経験したことのない、未知なことへの挑戦が求められています。

このことに関連して、「ファースト・ペンギン」という言葉があります。文字通り、1羽目のペンギンのことを意味しています。エサの魚を求めて、天敵のシャチやトドがいるかもしれない海に向かって、集団の中から飛び出す1羽目のペンギン。その1羽目が飛び込むことによって、他のペンギンも後に続いて、飛び込んでいきます。
これまで誰も経験したことがない未知の領域への挑戦は、リスクが高く、普通は躊躇するものです。そうしたリスクをとって、新しいことに挑む「ファースト・ペンギン」となるイノベーターの存在が必要であるという例えとして、よく用いられる表現です。

実際のペンギンが、天敵の存在というリスクを考えているのかどうかは分かりません。あるいは、もしかすると、後ろのペンギンに押し出されて、思わず海に飛び込んだだけかもしれません。しかし、人の集団心理においては、1羽目のペンギンになることは勇気がいることだということは、共感できることでしょう。

◆組織の変革にとって重要な「2羽目のペンギン」


一方で、ペンギンの世界では、1羽目が飛び込むと、他のペンギンたちは、本能的に後を追っていくだけかもしれませんが、人間の世界、とりわけ企業組織においては、1羽目のペンギンに続いてリスクに飛び込むことも、やはり、勇気のいることでしょう。
そして、結果として、「もしかすると、誰もついてきてくれないかも・・・」という不安が払しょくされず、ファースト・ペンギンが新たな挑戦に向かってアクションを起こすことを躊躇させてしまっているかもしれません。

その意味でも、企業組織の変革においては、ファースト・ペンギンの後に続いて飛び込む、「セカンド・ペンギン」の行動が重要になってきます。誰かが、新しいことをやってみようと声を出した時に、「それ、いいね!」とフォローして、3羽目、4羽目のペンギンが続くことを促す存在。そうした、2羽目のペンギンとなる人が、組織の変革に向けたアクションを後押しすると言えるのではないでしょうか。

そのためにも、職場における日常的なコミュニケーションや、社内のSNSなどのインフォーマルな交流を通じて、ファースト・ペンギンとセカンド・ペンギンが出会い、想いを共有し、励まし合うことができるような機会を意図的につくっていくことが、組織の活性化にとって大切なこととなります。