オンライン下で気を付けたい「メラビアンの法則」 2022/02/22 KAIKA Tweet
一般社団法人日本能率協会 KAIKA研究所
近田高志
2年にわたるコロナ禍のなかで、オンラインツールを利用したコミュニケーションが常態化しています。部門・チームの打合せ、部下との1on1(1対1でのミーティング)、顧客や取引先との打合せなど、なかには、30分単位で朝から晩までオンラインミーティングが重なって、トイレに行く時間もままならないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
このように増加しているオンライン下でのコミュニケーションですが、一方で、オンラインでは会話が深まらないという声を耳にします。今回のコラムでは、「メラビアンの法則」を題材に、オンライン下でのコミュニケーションについて、考えてみたいと思います。
「メラビアンの法則」とは、米国の心理学者であるアルバート・メラビアン教授が、1971年に著書『Silent Messages』の中で紹介したものです。概略を説明しますと、対面でのコミュニケーションには、「言語」(会話で交わされる言葉そのもの意味)、「聴覚」(声の大きさやトーン、速さ)、「視覚」(身振り、手振りなどのボディランゲージ)の3つの要素があり、相手への好意や反感などを伝えるようなコミュニケーションの際に、これらの要素が相互に矛盾した内容を送っているような状況においては、メッセージの伝達に占める割合は、言語情報が7 %、聴覚情報が38 %、視覚情報が55 %となるというものです。
例えば、部下がミスの報告をしに来た時に、「心配ない。気にしなくても良いよ」と言いながら、その声が暗く沈んでいて、目を合わせずに、眉間にシワを寄せた難しい顔をしていたとすると、部下は、言語情報を7%とし、声のトーン(聴覚情報)や表情(視覚情報)を93%の情報として受け止めて、「上司は不満を感じている、怒っている」と認識する。ということになります。
このようなシチュエーションのほかにも、相手からの提案に対する賛同や好意あるいは不満を示す、悩んでいる相手への共感や同情をする、迷惑をかけた相手への謝罪の気持ちを表すなど、感情を示すコミュニケーションは、仕事の中でも頻繁にあるかと思います。そうした時に、人は相手からのメッセージを、言語だけではなく、視覚・聴覚も含めたさまざまな情報をもとに、総合的に判断しているのです。
一方で、オンラインにおけるコミュニケーションでは、リアルな対面での会話よりも制約が伴います。交互に話すために間合いやテンポを取りにくい、マイクやスピーカーの状況によって声量が変わる、パソコンのスクリーンに映っている相手の画像を見るため目を合わせて話しにくい、表情や身振りなどのボディランゲージが見えにくいといったように、聴覚・視覚情報が歪んだり、伝わる情報量が少なくなったりします。
結果として、意図していなかったメッセージの矛盾が生まれ、さらには、「メラビアンの法則」が作用して、誤解が広がってしまうという状況になってしまうのではないでしょうか。
こうしたコミュニケーションの課題への対処方法としては、例えば、必要に応じて、カメラ目線にしてアイコンタクトをとるとか、「うなづき」を意識して使うことで、賛同や共感を伝えるといった工夫が考えられます。また、オンラインミーティングでは、自分の画像を見ることもできますので、時々、自分が相手にどのように映っているかを確認しても良いでしょう。
そして、もう一つの方法は、「確かめる」ことです。自分の意図が相手に正しく伝わっているか、あるいは、自分が相手の真意を正しく理解しているか。「・・・という理解で間違えていないでしょうか?」「・・・と思っていませんか?」というように、あえて、相手の真意を確認した方が良いこともあるでしょう。
『ロジカル・リスニング』の著書であるグローバル・インパクト 代表の船川淳志氏は、「コミュニケーションは受け手が決める」とおっしゃっています。相手が自分のメッセージをどのように受け止めているか、そして、自分は相手のメッセージを正しく受け止めることができているか。オンライン環境に限らず、多様性が求められる時代にあっては、これまで以上に丁寧なコミュニケーションをとることが大切になります。